「証券性の排除」とは?リスクはないの?
「証券性の排除」とは?
リスクはないの?
金融商品取引法の規制対象外となる仕組みの落とし穴を解説
はじめに:「証券性の排除」という言葉の誤解
金融商品取引法(以下「金商法」)の世界では、「証券性の排除」という言葉を耳にすることがあります。これは、ある金融の仕組みが、金商法で定める「有価証券」には当たらないと判断され、結果として金商法の厳しい規制を受けない状態を指します。しかし、「規制を受けない=リスクがない」と誤解されがちです。
このページでは、「証券性の排除」が具体的に何を意味するのか、そして、それが「リスクの排除」ではない理由、さらには事業者が注意すべき点について、分かりやすく解説します。
「証券性の排除」とは?
金商法の規制対象外となること
「証券性の排除」とは、ある金融の仕組みや権利が、投資のような性質を持っているにもかかわらず、金商法で定められた「有価証券」の定義から意図的に、または結果的に外れることを指します。
金商法は、投資家を保護するために、有価証券の取引や発行に対して厳しい情報開示義務や行為規制を課しています。しかし、特定の条件を満たす場合(例えば、投資家の数が非常に少ない、特定の関係者間での取引であるなど)、その仕組みは金商法の直接的な規制の対象外となることがあります。
これは、金商法の規制が「有価証券」を前提としているため、その定義に該当しないものは、原則として金商法の対象外となるという考え方に基づいています。
「証券性の排除」=「リスクがない」ではない!
「証券性の排除」がなされたからといって、その金融の仕組みにリスクが全くないわけではありません。むしろ、金商法の厳しい規制を受けないことで、投資家保護の仕組みが弱くなる可能性があります。
1. 他の法律の適用と保護の弱さ
金商法の直接的な規制を受けなくても、その仕組みは民法や会社法、特定商取引法など、他の法律の適用を受ける可能性があります。しかし、これらの法律は、金商法ほど投資家保護に特化した詳細なルールを定めているわけではありません。
例えば、金商法には目論見書による詳細な情報開示義務や、適合性の原則(顧客に合った商品を勧める義務)などがありますが、証券性が排除された仕組みには、同等の保護が提供されないことがあります。
2. 残る様々な投資リスク
金商法の規制外であっても、投資には本質的なリスクが伴います。
- 事業リスク: 投資対象となる事業がうまくいかなかった場合、出資金が戻ってこない、あるいは損失が発生する可能性があります。
- 信用リスク: 資金を集めた事業者や、その事業の運営者が倒産したり、信用を失ったりした場合、投資した資金を回収できなくなる可能性があります。
- 流動性リスク: 投資した権利を途中で現金化したいと思っても、買い手が見つからず、すぐに換金できない可能性があります。
- 情報非対称性: 投資家に対して十分な情報が開示されないため、投資判断に必要な情報が不足し、不利な取引をしてしまうリスクがあります。
- 詐欺リスク: 規制の網の目をかいくぐろうとする悪質な業者による詐欺被害に遭う危険性が高まります。
なぜ「証券性の排除」が問題になるのか?
「証券性の排除」という概念は、金融市場の多様性に対応するために必要ですが、同時に、その境界線が曖昧な「グレーゾーン」を生み出す原因にもなります。一部の事業者は、金商法による厳しい規制を避けようと、意図的に「証券性の排除」を狙った仕組みを作り出すことがあります。
しかし、その判断が誤っていたり、実態が金商法の定義する有価証券に該当すると判断されたりした場合、それは「無登録営業」という重大な法令違反となり、事業者には非常に重い罰則が科せられます。金融庁などの監督当局は、こうした規制を逃れようとする動きに対して厳しく目を光らせています。
まとめ:安易な判断は禁物。専門家への相談を。
「証券性の排除」は、「リスクの排除」を意味するものでは決してありません。金商法の直接的な規制を受けない場合でも、投資には本質的なリスクが伴い、投資家保護の仕組みが手薄になる可能性があります。
ご自身の事業が提供する金融の仕組みが「証券性の排除」にあたるかどうか、あるいはそれが本当に安全なものなのか、安易に判断することは非常に危険です。少しでも疑問がある場合は、必ず金融規制に詳しい専門家(行政書士など)に相談し、適切な法的判断とリスク評価を行うことが、事業者にとっても投資家にとっても、最も確実な道と言えるでしょう。
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