第二種金融商品取引業 登録後の継続的な義務と遵守事項 | 行政書士アイリス合同事務所

第二種金融商品取引業 登録後の継続的な義務と遵守事項
事業の健全性を保つために

登録はスタートライン。その後の継続的なコンプライアンスが事業の安定を左右します。

はじめに:登録後のコンプライアンスの重要性

不動産信託受益権の売買・代理・私募の取扱いなどを行う第二種金融商品取引業の登録は、事業を開始するための「スタートライン」に過ぎません。登録が完了した後も、金融商品取引法(以下「金商法」)に基づき、事業者は様々な継続的な義務と遵守事項を負います。

これらの義務を怠ると、行政処分や刑事罰の対象となる可能性があり、事業の継続性に重大な影響を及ぼします。行政書士アイリス合同事務所は、お客様が登録後のコンプライアンス義務を確実に履行し、健全かつ安定的に事業を継続できるよう、専門的な知見に基づいたサポートを提供しています。このページでは、登録後の主な義務と遵守事項について詳しく解説します。

1. 登録要件の継続的な維持

登録時に求められた財産的要件、人的要件、事務所要件、内部管理体制要件は、登録後も継続的に維持する義務があります。

  • 財産的要件の維持: 法人の場合、最低資本金(原則1,000万円)を維持し、財務状況が健全であることを継続的に証明する必要があります。個人の場合は営業保証金(1,000万円)の供託を維持します。
  • 人的要件の維持: 経営者、役員、重要な使用人(コンプライアンス責任者など)が、常に業務を適確に遂行できる知識と経験を維持しなければなりません。コンプライアンス責任者の常勤性や独立性も継続的に確認されます。
  • 事務所要件の維持: 業務を適切に遂行できる物理的に独立した事務所を常時確保し続ける必要があります。
  • 内部管理体制の維持: 法令遵守体制、リスク管理体制、苦情処理体制、内部監査体制など、業務を適確に遂行するための内部管理体制を継続的に整備・運用しなければなりません。

これらの要件に不備が生じた場合、業務改善命令などの行政処分の対象となる可能性があります。

2. 各種報告・届出義務

登録後も、金融庁や財務局に対し、定期的に、または変更が生じた際に各種報告書や届出書を提出する義務があります。

  • 事業報告書の提出(金商法第47条の2): 毎事業年度終了後3ヶ月以内に、事業報告書を作成し、財務局に提出する義務があります。これは、事業者の財務状況、業務内容、リスク管理体制などを開示するものです。原則として「金融モニタリングシステム(FIMOS)」を利用して提出します。
  • 説明書類の公衆縦覧(金商法第47条の3): 毎事業年度経過後4ヶ月を経過した日から1年間、説明書類を公衆縦覧に供さなければなりません。これにより、顧客や一般投資家が事業者の業務内容や財務状況を容易に確認できるようになります。
  • 変更届出義務(金商法第31条): 商号、資本金、役員、重要な使用人、本店・営業所の名称・所在地、業務の方法、他に行っている事業の種類など、登録事項に変更が生じた場合は、遅滞なく変更届を提出しなければなりません。特に、役員や重要な使用人の変更は、人的要件に関わるため、速やかな届出が必要です。
  • 金融商品取引業協会等の加入・脱退届出書: 協会への加入または脱退があった場合、2週間以内に届け出ます。
  • 業務休止・再開の届出: 業務を休止または再開する場合、遅滞なく届け出ます。
  • 役職員に法令等に反する行為(事故等)があった場合の届出: 法令違反や事故等があったことを知った場合、遅滞なく届け出ます。
  • 金融商品取引業等を廃止したときの届出: 廃止から30日以内に届け出ます。

これらの届出は、事業者の最新情報を常に規制当局が把握し、適切な監督を行うために不可欠です。

3. 業務遂行上の行為規制

金融商品取引業者は、投資家保護のため、日々の業務遂行において厳格な行為規制を遵守しなければなりません。

  • 広告規制(金商法第37条): 広告を行う際、商号、登録番号、手数料、リスク情報などを表示する義務があります。著しく事実に相違する表示や、人を誤認させるような誇大広告は禁止されます。インターネットのホームページやメールマガジンも対象です。
  • 契約締結前交付書面・契約締結時交付書面(金商法第37条の3、第37条の4): 顧客との契約締結前に、手数料、リスク、契約期間など重要事項を記載した「契約締結前交付書面」を交付し、契約締結時にも書面を交付する義務があります。
  • 禁止行為(金商法第38条): 顧客に対し虚偽のことを告げる行為、不確実な事項について断定的判断を提供する行為、勧誘の要請をしていない顧客への訪問・電話勧誘(不招請勧誘の禁止)、勧誘拒否の意思表示をした顧客への勧誘継続(再勧誘の禁止)などが厳しく禁止されています。
  • 損失補填の禁止: 投資家に生じた損失を補填することや、利益に上乗せして追加の利益を提供することは、投資判断を歪めるため禁止されています。
  • 顧客資産の分別管理義務(金商法第43条の2): 顧客から預かった金銭や有価証券を自己の固有財産と明確に区別して管理する義務があります。
  • 利益相反管理義務(金商法第40条の3): 顧客の利益を害するおそれのある利益相反行為を適切に管理するための体制を整備しなければなりません。

4. 苦情処理・紛争解決措置(金融ADR制度)

金商法の改正により、2010年10月1日以降、全ての金融商品取引業者に苦情処理措置および紛争解決措置を講じることが義務付けられています(金商法第37条の7)。これは「金融ADR(裁判外紛争解決手続)制度」と呼ばれ、金融機関と顧客との間のトラブルを、裁判によらず簡易・迅速に解決するための制度です。

  • 指定紛争解決機関との契約: 「特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター」(FINMAC)など、指定紛争解決機関との契約締結や、自社での苦情処理体制の構築が求められます。
  • 苦情処理規程の整備: 顧客からの苦情を適切に処理し、紛争が発生した場合には指定紛争解決機関を通じて解決を図る体制を整備する必要があります。

5. 法改正・監督指針への対応

金融商品取引業を取り巻く法規制は常に変化しています。金融商品取引法および関連政令・内閣府令、金融庁の監督指針は、市場環境の変化に応じて頻繁に改正される可能性があります。

事業者は、常に最新の法令情報を把握し、自社の業務や社内規程への影響を分析し、適切な対応を行う必要があります。これは、事業が継続的に法令を遵守し、安定的に運営していく上で不可欠なサポートとなります。金融庁による検査への対応も、継続的な義務の一つです。

6. 義務違反がもたらす行政処分・罰則

これらの継続的な義務や遵守事項を怠った場合、金融庁や財務局から以下のような行政処分や罰則が科される可能性があります。

  • 業務改善命令(金商法第51条): 業務運営の改善に必要な措置を命じられます。
  • 業務停止命令(金商法第52条): 6ヶ月以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命じられます。
  • 登録取消し(金商法第52条): 最も重い行政処分であり、金融商品取引業を営むことができなくなります。
  • 刑事罰: 無登録営業と同様に、一部の義務違反に対しては刑事罰が科される可能性もあります。

これらの処分は、事業の継続性に致命的な影響を与えるため、継続的なコンプライアンス体制の維持が極めて重要です。

行政書士アイリス合同事務所のサポート

行政書士アイリス合同事務所は、第二種金融商品取引業の登録後も、お客様が安心して事業を継続できるよう、継続的なコンプライアンス支援を提供いたします。

  • 継続的コンプライアンス指導: 法令改正情報の提供、社内規程の見直し、役職員へのコンプライアンス研修の助言など、日々の業務における法令遵守をサポートします。
  • 報告・届出義務の支援: 事業報告書や各種変更届出書の作成・提出を支援し、提出漏れや遅延を防ぎます。
  • 内部管理体制の運用支援: 構築した内部管理体制が実効的に機能しているかを確認し、必要に応じて改善策を提案します。
  • 監督当局による検査対応支援: 検査への準備や、当局からの質疑応答に的確に対応できるようサポートします。

お客様が安心して第二種金融商品取引業を継続できるよう、当事務所が強力にサポートいたします。

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