契約締結前交付書面・契約締結時交付書面とは?
第二種金融商品取引業における交付義務について
投資家保護のための重要な情報開示義務を解説
はじめに:情報開示が投資家保護の基盤
不動産信託受益権の売買・代理・私募の取扱いなどを行う第二種金融商品取引業において、顧客への適切な情報提供は、金融商品取引法(以下「金商法」)が定める投資家保護の根幹をなします。その中でも、「契約締結前交付書面」と「契約締結時交付書面」は、顧客が契約内容やリスクを十分に理解した上で投資判断を行うために不可欠な書類です。
行政書士アイリス合同事務所は、お客様がこれらの交付義務を確実に履行し、安心して事業を継続できるよう、専門的な知見に基づいたサポートを提供しています。このページでは、それぞれの書面がどのようなものか、その交付義務や記載内容、そして交付を怠った場合の罰則について詳しく解説します。
契約締結前交付書面とは?(金商法第37条の3)
定義と目的
契約締結前交付書面とは、金融商品取引業者が顧客と金融商品取引契約を締結する「前」に、顧客に対して交付が義務付けられている書面です。その主な目的は、顧客が契約内容やリスクを十分に理解し、納得した上で契約を締結するかどうかを判断できるようにすることにあります。
この書面は、顧客が冷静に検討する時間を与え、不適切な勧誘による契約締結を防ぐための重要な役割を果たします。
主な記載内容
契約締結前交付書面には、主に以下の事項を記載する必要があります。
- 手数料、報酬、その他の対価の種類ごとの金額またはその計算方法: 顧客が負担する費用を明確に示します。
- 取引による損失の可能性(リスク情報): 不動産価格変動リスク、金利変動リスク、流動性リスク、信託銀行の信用リスクなど、具体的なリスクを分かりやすく説明します。
- 契約期間: 契約の開始日と終了日、または期間の定めがない場合はその旨。
- 顧客が負担すべき費用: 手数料以外の諸費用。
- 利益相反の可能性: 顧客の利益を害するおそれのある利益相反が生じる場合の状況と、その管理方法。
- 苦情処理措置および紛争解決措置に関する事項: 苦情受付窓口の連絡先、対処手順、金融ADR機関の情報など。
- クーリング・オフに関する事項: クーリング・オフの適用がある場合、その条件と手続き。
特に重要な事項は、最初に平易な言葉で記載し、一定の事項は12ポイント以上の大きさの文字で明瞭かつ正確に記載するなどの規定があります。
契約締結時交付書面とは?(金商法第37条の4)
定義と目的
契約締結時交付書面とは、金融商品取引業者が顧客と金融商品取引契約を「締結した時」に、顧客に対して交付が義務付けられている書面です。これは、契約内容を最終的に確認し、顧客の手元に契約の証拠を残すことを目的としています。
主な記載内容
契約締結時交付書面には、契約締結前交付書面の内容に加え、主に以下の事項を記載する必要があります。
- 契約が成立した年月日: 正確な契約締結日。
- 契約の相手方(金融商品取引業者)の商号、名称または氏名、登録番号: 契約の当事者を明確にします。
- 契約の種類: 締結した金融商品取引契約の具体的な種類。
- その他、内閣府令で定める事項: 個別の契約内容に応じた詳細情報。
この書面は、契約の証拠として顧客に交付されるため、正確かつ網羅的な記載が求められます。
交付義務と違反時の罰則・リスク
交付義務の有無:はい、交付義務があります。
金商法第37条の3および第37条の4により、金融商品取引業者は、それぞれの書面を顧客に対して交付することが義務付けられています。これは、投資家保護のための重要な情報開示義務であり、この義務を怠ることは法令違反となります。
交付を怠った場合の罰則・リスク
契約締結前交付書面や契約締結時交付書面の交付義務を怠った場合、金融庁や財務局から以下のような行政処分や罰則が科される可能性があります。
- 業務改善命令: 業務方法の変更その他業務の改善に必要な措置を命じられます。
- 業務停止命令: 6ヶ月以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命じられます。
- 登録取消し: 悪質な場合や、他の法令違反と重なる場合には、最も重い行政処分である登録取消しとなる可能性もあります。
- 刑事罰: 交付義務違反に対しては、刑事罰が科される可能性もあります。
- 損害賠償請求: 投資家が書面の不交付によって損害を被った場合、事業者に対して損害賠償請求を行う可能性があります。
- 社会的な信用の失墜: 法令違反は、企業のブランドイメージや社会的な信用を大きく損ない、事業継続に深刻な影響を及ぼします。
これらのリスクを避けるためにも、交付義務を正確に理解し、確実に履行することが極めて重要です。
行政書士アイリス合同事務所のサポート
行政書士アイリス合同事務所は、第二種金融商品取引業における契約締結前交付書面・契約締結時交付書面の作成と交付義務の履行を強力にサポートいたします。
- 書面ひな型の作成支援: 金商法および関連内閣府令、監督指針に適合した、お客様の事業内容に即した書面ひな型の作成を支援します。
- 記載内容のリーガルチェック: 必要事項の網羅性、表現の正確性、分かりやすさなど、記載内容が規制に抵触しないかリーガルチェックを行います。
- 交付プロセスの確立支援: 適切なタイミングでの交付、顧客の受領確認、記録保存など、交付プロセスが法令に適合するよう支援します。
- 役職員向け研修の助言: 役職員が交付義務の重要性を正しく理解し、日々の業務で実践できるよう、研修内容について助言します。
お客様が安心して第二種金融商品取引業を運営できるよう、当事務所が強力にサポートいたします。
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